「水脈」と「鉱脈」を読む人になる (その2)

「正しいこと」を言ったはずなのに、
その瞬間、場の空気が冷える。

相手は否定しない。

でも、言葉数が減る。
視線が落ちる。
重たい沈黙が落ちる。

 

この現象が厄介なのは、

誰も反論しないまま、問いと主体性だけが静かに消えることです。

だから多くのリーダーは「自分の伝え方が悪いのか」と、

地上(言葉)を増やし続けてしまう。

けれど地下(感情の流れ)が詰まっていると、

場は動きません。

 

私はこの 「場が冷える感覚」 を、
これまでの仕事の中で何度も味わってきました。

不思議なことに、
あとから会議やセッションのログを見返すと、
そこがいつも分岐点になっています。

うまくいくはずだった対話が、うまくいかなくなる地点。
言葉が、言葉として機能しなくなる地点。

私はそこでいつも、
水の流れが変わるのを感じていました。

言葉の下には、水脈が流れている

組織や対話の場には、表に出ている言葉とは別に、
その下を流れているものがあります。

それは、

感情、恐れ、期待、疑念、嫉妬、不安、諦め、願い。

言葉になる前の、流動する何か。

私はそれを、水脈と呼んでいます。

誰もが言葉という「地表」ばかりを見る。
でも、場を動かしているのは、たいていその下を流れている水脈です。

正しい言葉を重ねるほど、
その水脈が詰まり、濁り、流れが止まることがある。

そのとき、場は静かに死にます。

人は反論しなくなる。
問いをやめる。
考えることをやめる。

それが、あの「冷えた沈黙」の正体でした。

沈黙の奥には、鉱脈が眠っている

もうひとつ、私が見続けてきたものがあります。

それは、沈黙の奥に眠っている 鉱脈 です。

誰もが避けたがる場所。
触れたくない場所。
言語化されないまま放置されている場所。

・言えなかった不満
・認められなかった怒り
・置き去りにされた期待
・裏切られた感覚
・助けてほしかった気持ち

それらは問題ではない、
大切なリソースなのです。

 

たとえば会議で、

正論を積み上げた瞬間に沈黙が落ちる。

その沈黙の奥には「置き去りにされた」「認めてほしかった」

という鉱脈が眠っている。

そこに触れない限り、どれだけ説明を増やしても、

同じ場所で止まり続けます。

 

そこには、変化のエネルギーが眠っています。

けれど、多くの場ではそこに触れない。
正論や理論やフレームで覆い隠し、地表を整えようとする。

だから結局、何も変わらない。

私は、沈黙が落ちた瞬間にいつも思います。

ああ、ここに鉱脈がある。

私が「教える人」をやめた理由

私はかつて、教えようとしていました。

目新しい理論を渡そうとした。
有用なフレームを示そうとした。
単純明快な構造を説明しようとした。

でもそのたびに、場は理解と納得で満たされ、
そのぶん人は、自分で考え、自分で決める位置から、
そっと外れていきました。

そのときようやく気づいたのです。

私は、地上の説明を増やしているだけで、
地下の水脈も鉱脈も、見ていなかった。

それが私の失敗でした。

だから私は、「教える人」をやめました。
代わりに、「観測する人」でいようと思いました。

水脈の流れを読む人。
鉱脈の位置を示す人。

掘るのではなく、

そこにあることを示す人。

 

静かに観測し続ける

もしあなたが今、

正しいことを言っているのに、
人が動かない

言葉は通っているはずなのに、
場が死んでいる

説明は十分なのに、何も変わらない

もし、そう感じているなら、
それはあなたが間違っているのではありません。

あなたがまだ触れていない 水脈 があり、
あなたがまだ見ていない 鉱脈 があるだけです。

 

変化は、地上ではなく地下から始まります。

 

私はこれからも、
その地下を静かに観測し続けたいと思っています。

 

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